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サラリーマンの節税対策とその方法:個人でも使える24の控除とは

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サラリーマンの節税対策とその方法:個人でも使える24の控除とは

「額面年収が増えたのはいいけれど、それ以上に税金の負担が気になる…」

納税は国民の義務とは言え、一定以上の収入を得ている方にこのような悩みはつきものです。

そこで今回は、個人の会社員でもできる正規の節税対策や、その方法を詳しくまとめました。
読み進めていただければ、今のあなたが利用できる節税方法が分かります。

目次

個人の節税対策に必要な「所得控除」「税額控除」とは

個人の節税対策に必要な「所得控除」「税額控除」とは

具体的な節税対策について見ていく前に、まずは「所得控除」「税額控除」についての基本情報を押さえておきましょう。

①所得控除は「所得税がかかる対象となる年収」を減らすための制度

所得税とは、名前の通りあなたの所得(収入)に対して発生する税金です。

所得税には累進課税制度(収入が高いほど税金が高くなる)が適用されており、実際の税金は収入の「年5%~約45%」相当となっています。

現行の所得税額
課税される所得金額税額
194万9000円まで所得の5%
195万円
~329万9000円
所得の10%
-97,500円
330万円
~694万9000円
所得の20%
-427,500円
695万円
~899万9000円
所得の23%
-636,000円
900万円
~1799万9000円
所得の33%
-1,536,000円
1800万円
~3999万9000円
所得の40%
-2,796,000円
4000万円以上所得の45%
-4,796,000円

そしてあなたが所得控除を利用すれば、「所得税の対象となる収入」を抑えられます。

例えば400万円の収入を得ている人の所得税額は、本来「372,500円」です。
(400万×0.2-427,500)

ですがもし100万円の所得控除を受けられたなら、課税対象の収入は「300万円」に減額されます。

この場合の所得税額を計算すると「202,500円」となり、約17万円の税金を抑えられたことになりますね。

このように、所得控除を活用することは「所得税の節約」に繋がります。

②税額控除は「発生した所得税そのもの」を減額する制度

所得控除と混同されやすいのが「税額控除」です。

こちらは所得税を計算した後、その税金が丸々差し引かれるものと考えるのが良いでしょう。

先の例で202,500円の所得税が発生した方が、住宅ローンの利用などにより「10万円の税額控除」を受けた場合、所得税がそのまま10万円減額されます。

課税対象の所得が控除、つまり差し引かれるのが「所得控除」、税額そのものが差し引かれるのが「税額控除」と考えていただければ分かりやすいでしょう。

個人でできる!15の所得控除とその条件

個人でできる!15の所得控除とその条件

ここからは、個人の会社員でも利用できる「所得控除」についてお話していきます。

①15の所得控除の一覧

現在の所得控除の内容を、簡単にまとめると以下のようになります。

現行の所得控除一覧
基礎控除所得が2400万円以下であれば誰にでも適用
配偶者控除配偶者の所得が48万円(給与所得のみなら103万円)以下の場合に適用
配偶者特別控除配偶者の所得が48万円~133万円(給与所得のみなら201万円)以下の場合に適用
扶養控除扶養している子や親、祖父母の所得が48万円(給与所得のみなら103万円)以下の場合に適用
障害者控除納税者、配偶者、扶養親族に障害者がいる場合に適用
寡婦控除所得500万円以下のシングルマザー、または夫と死別した場合に適用
ひとり親控除所得500万円以下のひとり親世帯に適用
勤労学生控除所得75万円(給与所得のみなら130万円)万円以下の、働く学生に適用
※扶養下にある学生は含まれない
医療費控除保険金などを差し引いた医療費が10万円を超える場合に適用
寄附金控除原則として「寄附金-2,000円」に適用
ふるさと納税もこれ
生命保険料控除生命保険、介護保険、個人年金に対する支払いに適用
地震保険料控除地震保険の保険料に適用
社会保険料控除各種健康保険や年金保険料などの全額に適用
小規模企業共済等掛金控除共済契約に基づく掛金などに適用
雑損控除災害や盗難で被害を受けた場合に適用
※その他、事業についての出費が多い会社員は「特定支出控除」を利用可能

それではそれぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

②最大48万円の「基礎控除」は誰にでも適用される

48万円の「基礎控除」は、非常に年収の高い方を除き誰にでも適用されます。

つまりあなたの収入のうち48万円は、ほぼ無条件で非課税となるわけですね。

現在(令和2年~)の基礎控除
合計所得金額控除額
2400万円以下48万円
2400万円超
~2450万円
32万円
2450万円超
~2500万円
16万円
2500万円超0円

参考金融庁公式HP「基礎控除」

③家族を扶養しているのなら「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」などを受けられる

ここからは、控除対象となる子や親などを扶養している場合に適用される所得控除について見ていきましょう。

(1)配偶者控除

あなたの年収が1000万円以下、かつ収入が一定以下の配偶者がいるのなら、以下の「配偶者控除」を受けることができます。

この場合の「一定以下」とは「合計所得金額が48万円以下であること」を指しますが、配偶者の収入源が給与収入のみならば、「年収103万円以下であること」と考えてよいでしょう。

そして以上の条件を満たした場合の、控除額は以下の通りです。

配偶者控除の金額
納税者の所得控除額
900万円以下38万円
※配偶者が70歳以上なら48万円
900万円超
~950万円
26万円
※同32万円
950万円超
~1000万円
13万円
※同16万円
1000万円超0円
その他の条件
  • 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
備考
  • 配偶者が障害者の場合、さらに障害者控除が適用

また給与所得103万円(または合計所得48万円以下)の配偶者本人に対して、所得税は発生しません

CHECK国税庁公式HP「配偶者控除」

(2)配偶者特別控除

配偶者の所得が「配偶者控除」の条件を上回っていても、その金額が年133万円以下(所得が給与のみの場合)なら、「配偶者特別控除」を利用できるかもしれません。

その内容は控除を受ける納税者の所得によって変動するのですが、ここでは「所得が900万円以下」のケースを掲載しました。

配偶者特別控除(納税者の所得が900万円以下の場合)
配偶者の合計所得控除額
48万円超
95万円以下

※配偶者の収入源が給与所得のみなら+55万円
(=この場合は150万円以下)

38万円
95万円超
100万円以下
※同上
36万円
100万円超
105万円以下
※同上
31万円
105万円超
110万円以下
※同上
26万円
110万円超
115万円以下
※同上
21万円
115万円超
120万円以下
※下記の備考参照
16万円
120万円超
125万円以下
※下記の備考参照
11万円
125万円超
130万円以下
※下記の備考参照
6万円
130万円超
133万円以下
※下記の備考参照
3万円
納税者の年収が900万円超の場合については国税庁公式HP参照
備考:給与所得控除額について
配偶者の収入源が給与所得(パート・アルバイトなど)のみである場合、合計所得に「給与所得控除額」をプラスできる。

この金額は年間給与額が1,625,000円以下なら一律55万円となるため、控除を満額受けるためには給与所得が「95万円+55万円=150万円」以下であればよい。

一方、配偶者の年間給与額が1,625,000円を超える場合は個別で計算が必要となり、その結果として配偶者特別控除を受けるための最大の年収額は201万円となる。

その他の条件
(1)控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。

(2)配偶者が、次の要件すべてに当てはまること。

イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。

ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。

ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

ニ 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(中略)であること。

(3)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。

(4)配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。

(5)配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。

つまり配偶者控除を受けられなくても、配偶者の所得が133万円(給与のみなら201万円)までなら控除を受けられるということですね。

また控除額は、配偶者の所得が95万円(給与のみなら150万円)までの場合に最も高い38万円となります。

ただし実際のところ、パートなどとして働く方はこの「配偶者特別控除」の制限よりも「年収130万円の壁」を意識している方が多いですね。

これは130万円以上の収入を得ると、配偶者の扶養から外れ、自身で健康保険料を支払う必要があるためです。

CHECK国税庁公式HP「配偶者特別控除」

(3)扶養控除

あなたが「16歳〜22歳以下の子」または「70歳以上」の子や両親、祖父母などを扶養しているのであれば、扶養控除を利用できる可能性があります。

扶養親族の範囲
原則としてその年の12月31日時点で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2)納税者と生計を一にしていること。

(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

所得の制限は配偶者控除と同じ48万円(給与所得者の場合は103万円)ですね。

親の扶養に入っている学生は、アルバイトの目安を「年収103万円」(または扶養から外れる130万円)に定めることで、この控除を受ける事ができます。

扶養控除の対象と控除額
扶養対象控除額
控除対象扶養親族
(16歳以上の方)
38万円
特定扶養親族
(19歳~22歳)
63万円
老人扶養親族
(70歳以上)
かつ同居している直系親族
58万円
老人扶養親族
(70歳以上)
かつ上記に該当しない
48万円
備考
老人扶養親族の「同居」について、入院は「同居」扱いとなるが老人ホームなどへの入居はこれに該当しない

ちなみに年金収入は「公的年金等控除」という制度が適用されます。

公的年金等控除が適用されると、110万円分の年金収入は所得から控除されます。
そのため、70歳以上の扶養親族は、一般的に「年収158万円」以下であれば扶養控除が適用されます(納税者の年収が1000万円以下の場合)。

CHECK国税庁公式HP「扶養控除」
CHECK国税庁公式HP「公的年金等の課税関係」

★ちなみに15歳以下の子に対しては児童手当が適用されるため、扶養控除が適用されません。

④「障害者控除」「寡婦控除」「ひとり親控除」「勤労学生控除」は条件を満たす世帯に適用

(1)障害者控除

納税者自身、生計を同じくする配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、以下の障害者控除を受けることができます。

障害者控除の内容
区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円
※障害者、特別障害者の区分については国税庁公式HPを参照

この障害者控除は扶養控除や配偶者控除と併用できます。

また、扶養控除が適用されない16歳未満のお子様も、この控除の対象となります。

CHECK国税庁公式HP「障害者控除」

(2)寡婦控除

令和2年以降、「寡婦」にあたるのは以下の条件のいずれかに該当する方となります。

★現行の「寡婦」の要件

(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人

(2)夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

「ひとり親」に該当しないこと
※納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと

国税庁公式HPより

現行の寡婦控除の金額は、一律で「27万円」となっています。

CHECK国税庁公式HP「寡婦控除」

(3)ひとり親控除

あなたが以下の要件をすべて満たすのであれば、「ひとり親控除」を利用できます。

★ひとり親控除の要件

(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。

(2)生計を一にする子がいること。

※この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。

(3)合計所得金額が500万円以下であること。

国税庁公式HPより

ひとり親控除の金額は、一律で35万円となっています。

CHECK国税庁公式HP「ひとり親控除」

(4)勤労学生控除

あなたが以下の条件を満たす学生なら、「勤労学生控除」を受けられます。

この場合の控除額は一律で27万円ですね。

★勤労学生控除の要件

(1)給与所得などの勤労による所得があること

(2)合計所得金額が75万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
※収入が給与所得のみなら上限130万円

(3)特定の学校の学生、生徒であること
(高校・大学・専門学校など)

国税庁公式HPより抜粋

一般的に合計所得金額が75万円以下の学生に所得税は発生しません。

こちらは何らかの事情で、親権者などの扶養に入れていない学生向けの制度だと言えるでしょう。

CHECK国税庁公式HP「勤労学生控除」

⑤年間の医療費が10万円以上なら「医療費控除」の申告を

その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費のうち、保険金などで補填された金額を差し引いた実費が10万円を超えるのなら、その分だけ「医療費控除」を受けられます。

医療費控除の対象となる金額

実際に支払った医療費-保険金などで補填された金額※-10万円

例:年間の医療費が30万円、うち8万円を入院保険で賄えた場合、そこから10万円を差し引いた12万円が医療費控除の対象

※生命保険・医療保険や高額医療費制度、出産育児一時金など

この医療費控除は手術費や処方箋の代金、家族の分の支払いも対象となります。

★医療費控除の適用を受けるためには、確定申告が必要となります。

CHECK国税庁公式HP「医療費を支払ったとき(医療費控除)」

セルフメディケーション税制とは?

処方箋なしで購入できる医薬品を年に12,000円以上購入し、勤務先で実施する健康診断や自治体の特定健康診査(メタボ検診)、がん検診などを受けている方は、「セルフメディケーション税制」を利用できます。

この場合の控除額は、医薬品の購入額から1,200円を引いた額(最高88,000円)となっています。

またセルフメディケーション税制と、通常の医療費控除を併用することはできません

セルフメディケーション税制の対象薬品かどうかは、ドラッグストアの店頭で確認することができます。

CHECK国税庁公式HP「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」

⑥「ふるさと納税」を含む寄付金は「寄附金控除」の対象に

あなたが国や地方公共団体、特定公益増進法人に対して寄付を行った場合には「寄附金控除」を受けることができます。

その代表的な方法が「ふるさと納税」ですね。

寄附金控除(ふるさと納税)の控除額

以下のいずれか低い金額が適用
(1)寄付金の合計額-2000円
(2)総所得金額の40%相当-2000円

こちらは確定申告をせずとも簡単に利用でき、2,000円の自己負担額のみで自治体から返礼品を受け取れるということで、普及率の高い節税方法となっています。

CHECK国税庁公式HP「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」

★政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金などであれば、所得控除ではなく税額控除が適用されます。

⑦生命保険や地震保険に加入しているなら「生命保険料控除」「地震保険料控除」が適用

あなたが生命保険や地震保険などに加入しているのなら、一定の金額分の所得控除を受けることができます。

(1)生命保険料控除

生命保険料控除の対象は、通常の生命保険に加え「介護医療保険契約」「個人年金保険契約」となります。

控除はそれぞれの契約が対象となり、生命保険料控除の上限は12万円となっています。

生命保険料控除額(平成24年以降に契約を締結した場合)
年間の保険料控除額
2万円以下全額
2万円超
~4万円
保険料の半額+1万円
4万円超
~8万円
保険料の4分の1
+2万円
8万円超4万円
※平成23年以前の契約や2つを併用している場合については国税庁公式HPを参照

CHECK国税庁公式HP「生命保険料控除」

(2)地震保険料控除

現行の地震保険料控除の仕様は以下の通りです。

地震保険料控除
年間の支払保険料控除額
5万円以下全額
5万円超5万円
※平成18年までに締結した契約に適用される可能性がある旧長期損害保険料については国税庁公式HP参照

一年間に支払った地震保険料が5万円以下であれば全額、5万円を超えている場合は一律5万円が控除されます。

CHECK国税庁公式HP「地震保険料控除」

⑧「社会保険料控除」は生計を同一にする家族の保険料も控除の対象に

社会保険料の控除対象となるのは「健康保険」「年金保険料」「介護保険料」などとなります。
対象は、家族の分を含む支払額の全額ですね。

通常、会社員の社会保険料などは給与から自動的に差し引かれ、年末調整の際に計算されます。
そのため、控除を受けるためにやるべきことは特にありません

ただし「後期高齢者医療制度の保険料を支払った」「国民健康保険料や国民年金保険料を支払った」といった場合には、自治体などから届く証明書を用意しておく必要があります。

CHECK国税庁公式HP「社会保険料控除」

⑨企業型・個人型(iDeCo)の年金加入者掛金には「小規模企業共済等掛金控除」が適用

あなたが小規模企業共済、そしてiDeCo(個人型確定拠出年金)などに加入しているのなら、掛け金の全額「小規模企業共済等掛金控除」が適用されます。

小規模企業共済は経営者や個人事業主が将来の共済金を受け取るための制度ですので、会社員の方は主にiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することとなるでしょう。

CHECK「積み立てNISA」「NISA」「iDeCo」の違いと選び方
CHECK国税庁公式HP「小規模企業共済等掛金控除」

⑩災害や盗難などの被害に遭った場合は「雑損控除」を利用できる

あなたが災害や盗難、横領などの被害に遭ったのなら、以下の雑損控除を受けることができます。

雑損控除の金額

いずれか多い方が適用

(1)(損害金額※+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

※損害を受けた直前の、資産の「時価」をもとに計算

ただし詐欺や恐喝は雑損控除の対象となりません。

また損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合には、最長3年間の繰り越しが可能です。

CHECK国税庁公式HP「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」

★災害のあった年分の所得が1,000万円以下の方であれば、災害減免法による所得税の軽減免除という別の制度を利用できる場合があります。

⑪業務についての支出が多いなら「特定支出控除」を使える

会社員の方は「通勤費」「転居費」「資格取得費」など、業務に必要な出費が給与所得控除額の2分の1を上回った場合に「給与所得者の特定支出控除」という制度を利用できます。

「給与所得控除額」は年収400万円の方であれば124万円、年収600万円の方であれば164万円相当となりますね。(参考国税庁公式HP

この半分以上を「仕事のために」支払っているのなら、この制度を利用可能となります。

ただしこの制度はあなた自身が支払った費用のみが対象です。

会社から十分な家賃や出張費用の支払いを受けている場合には適用されません。

また、この制度を利用するためには確定申告と給与の支払者の証明書が必要です。

CHECK国税庁公式HP「給与所得者の特定支出控除」

こちらも個人のサラリーマンOK!9の税額控除とその条件

こちらも個人のサラリーマンOK!9の税額控除とその条件

ここからは、所得ではなく「税金そのもの」が控除(減額)される「税額控除」の制度について解説していきます。

①9の税額控除の一覧

個人に対し適用される可能性のある、主な9つの税額控除は以下の通りです。

個人で利用できる9つの税額控除
住宅借入金等特別控除住宅の新築や購入、増改築をした場合に適用
住宅耐震改修特別控除住宅の耐震改修をした場合に適用
住宅特定改修特別税額控除バリアフリー改修、省エネ改修などを行った場合に適用
※住宅借入金等特別控除との選択適用
認定住宅等新築等特別税額控除一定基準を満たす省エネ住宅などを購入した場合に適用
※住宅借入金等特別控除との選択適用
配当控除株などによる配当を受け取った場合、その5%または10%相当に適用
外国税額控除外国で生じた所得について、外国で所得税が発生する場合に適用
政党等寄附金特別控除政治活動についての寄附金を支払った場合に適用
認定NPO法人等寄附金特別控除認定NPOに寄附金を支払った場合に適用
公益社団法人等寄附金特別控除公益社団法人に寄附金を支払った場合に適用
※その他の制度(事業者向けのものを含む)については国税庁の公式HPを参照

税額控除は所得控除に比べると、利用できる人は少ないです。

とは言え「マイホームを購入した」「投資などで配当を得た」といった場合であれば、会社員であっても税額控除を受けられることでしょう。

②会社員が適用されやすいのは「住宅借入金等特別控除」と「配当控除」か

ここからは、会社員に適用されやすい主な税額控除の制度についてお話します。

(1)住宅借入金等特別控除

住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローンなどを利用してマイホームを新築、購入、あるいは増改築した場合に利用できる税額控除です。

控除の限度額などは住宅を取得した年などにより変わりますが、基本的には住宅を購入等してからの10年間であれば、住宅ローンの残高の1%分の税額控除を受けられます。

この控除を受けるためには会社員の方でも確定申告が必要になりますのでご注意ください。

CHECK7.会社員のための確定申告の手引き

★税額控除の具体的な金額は、住宅を取得した年や経過年数によって異なります。
詳細については以下の公式HPをご確認ください。

CHECK国税庁公式HP「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

★あなたが「認定長期優良住宅」「特定エネルギー消費性能向上住宅」に該当する住宅を購入した場合には、認定住宅等新築等特別税額控除という制度の選択も可能です。

(2)配当控除

あなたが投資などにより配当を得た場合には、以下の配当控除を受けることができます。

配当控除(所得1000万円以下の場合)

以下の金額の合計額

(1)剰余金の配当等による配当所得の金額の10%
(2)証券投資信託の収益の分配金による配当所得の5%

※所得が1000万円以上を超える場合については国税庁の公式HPを参照

配当控除を受けるためには、会社員であっても確定申告が必要です。

そのため確定申告扶養制度を利用したもの控除の対象とならないのでご注意ください

また外国の法人から受ける配当なども、控除の対象外となります。

CHECK国税庁公式HP「配当所得があるとき(配当控除)」

★その他の主な税額控除については、以下の公式HP情報をご確認ください。

CHECK国税庁公式HP「居住者に係る外国税額控除」
CHECK国税庁公式HP「政党等寄附金特別控除」
CHECK国税庁公式HP「認定NPO法人に寄附をしたとき」
CHECK国税庁公式HP「公益社団法人等に寄附をしたとき」

「積み立てNISA」「NISA」「iDeCo」の違いと選び方

「積み立てNISA」「NISA」「iDeCo」の違いと選び方

ここからは「節税できる資産運用」の方法として挙げられやすい、「積み立てNISA」「NISA」「iDeCo」の違いや選び方についてお話していきます。

①「積み立てNISA(つみたてNISA)」は最長20年、細く長く利用できる

「積み立てNISA(つみたてNISA)」とは、未経験者、初心者の資産形成をサポートするための制度です。

運用の対象は「国の基準に合った、低コストな投資信託の商品」に限られ、年間40万円までが非課税投資枠となります。
(※投資信託…運用の専門家が投資家から集めたお金で株式や債券に投資する商品のこと。運用によって生じた損益は、すべて投資家に帰属されます)

このとき非課税となるのは「投資額の全額」ではなく、「投資によって得られた利益」に限られますのでご注意ください。

「積み立てNISA」では、非課税投資枠が最長で20年間適用されます。

また積み立てたお金をいつでも引き出せるため、「できる限り低いリスクで、コツコツ資産運用をしたい」という方向けだと言えるでしょう。

積み立てNISAの特徴

  • 安価に利用できる、「国の基準に合った投資信託」が投資の対象
  • 年間非課税投資枠は40万円
  • 年間非課税投資枠が適用されるのは20年
  • いつでも換金できる

②「NISA」は年120万円までの運用が非課税に

「NISA」(一般NISA)の年間非課税投資枠は、積み立てNISAの3倍にあたる「120万円」です。

さらに投資信託だけではなく、通常の株式も非課税の対象となるため、自分で銘柄を自由に選びたいという方はこちらを選んだほうが良いでしょう。
株主優待に期待したいという場合もこちらが有力ですね。

ただし非課税期間は5年と、積み立てNISAの20年に比べると短くなっています。

NISA(一般NISA)の特徴

  • 投資先を自由に選べる
  • 年間非課税投資枠は120万円
  • 年間非課税投資枠が適用されるのは5年
  • ┗この期間が過ぎても、非課税枠がなくなるだけで資産運用は可能

  • いつでも換金できる

③「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は最も節税効果が高いが、60歳まで引き出せない

個人型確定拠出年金「iDeCo」は、一言で言うと「原則60歳まで引き出せない代わりに、3つの中で最も節税効果が高い」私的年金の制度です。

年金という名前が付いていることからも分かる通り、基本的には「個人で、将来受け取れる年金を積み立てておく」制度だと考えるとわかりやすいでしょう。

こちらの方法を使うと、(積み立て)NISAとは異なり投資によって得られた利益はもちろん、投資・運用額のすべてが所得控除の対象となります。

節税をしながら老後の資金を積み立てておきたい、という場合にはこの方法が有効かと思います。

ちなみに運用先によってはもちろん損をしてしまう可能性もありますが、運用商品にはノーリスクな定期預金も選択可能です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴

  • 投資先を自由に選べる
    ┗定期預金を含む
  • 投資額の全額が所得控除の対象となる
  • 原則として60歳まで引き出せない
  • 年収が高い方であれば「不動産投資」が有効になることも

    年収が高い方であれば「不動産投資」が有効になることも

    年収が目安として1200万円以上であれば、マンションやアパートを購入して収益を得る「不動産投資」が有効になる可能性があります。

    賃貸運用のために購入した建物の金額は、法定耐用年数(物件によって異なります)などに応じて経費として申告できます。

    またコンスタントに賃貸収入を得られれば利益を獲得できますし、そうでなくても赤字が発生してしまったときには所得控除を受けられます。

    とは言え初期投資額が非常に高い方法、かつお住まいの地域などによっても見込める利益は大きく異なるため、収支計算や事業計画の作成が不可欠です。
    基本的には、専門家などと個別に相談し、資産運用を含めたシミュレーションを行ったうえで検討することをお勧めします。

    所得控除・税額控除を受けて所得税を節税するために必要な手続きとは

    所得控除・税額控除を受けて所得税を節税するために必要な手続きとは

    ここからは、所得控除・税額控除を利用して実際に節税を行う方法について解説します。

    ①会社員の場合、多くの所得控除は「年末調整」で対応できる

    ほとんどの給与所得者は、「年末調整」を通して所得控除・税額控除を受けることができます。

    「年末調整」とは毎月の源泉徴収額と控除額などを照らし合わせ、税金の過不足を調整する手続きのことですね。

    所得控除や税額控除により「所得税に対し、源泉徴収の金額が高すぎた(または低すぎた)」という場合には、当月または翌月の給与で調整が行われます。

    年末調整はすべての雇用者に義務付けられています。
    あなたが給与所得者ならば、12月ごろに扶養家族の有無、生命保険の金額などを尋ねられることでしょう。

    あとは要求された情報や必要に応じた書類を提出することで、会社側が所得控除・税額控除の手続きを済ませてくれるはずです。

    ②「医療費控除」「住宅借入金等特別控除」などの一部は確定申告が必須

    ただし残念ながら、すべての所得控除・税額控除が「年末調整」で完結できるわけではありません。

    多額の医療費が発生した場合の「医療費控除」や、住宅を購入した場合などの「住宅借入金等特別控除」を適用するためには確定申告が必要となります。

    とは言え給与所得者の方は、個人事業主の方に比べ簡易な確定申告書(確定申告書A)を利用できます。

    CHECK7.会社員のための確定申告の手引き

    ③「ふるさと納税」は「ワンストップ特例制度」の利用時、確定申告不要

    「寄附金控除」を受けられる「ふるさと納税」年末調整の対象にならないものの、「ワンストップ特例制度」という専用の制度を利用できます。

    これは任意の自治体への寄附後、返礼品やふるさと納税の証明書と一緒に届く「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、本人確認書類のコピーを添えて返送するだけで控除が完了するというシステムですね。
    返送用の封筒も返礼品と一緒に送られてきますのでご安心ください。

    確定申告をせずとも簡単に所得控除を受けられるというのも、「ふるさと納税」が普及している理由の一つでしょう。

    会社員のための確定申告の手引き

    会社員のための確定申告の手引き

    ここからは、会社員の方が「医療費控除」「配当控除」などを受けるために確定申告を行う流れについて解説していきます。

    ①基本的には源泉徴収票の内容に、必要な情報と書類を加えればOK

    はじめて確定申告を行う上で気になるのは、やはりその手間ですよね。

    とは言え会社員の方であれば、源泉徴収票を見てそのまま「給与」「所得控除の合計額」などを記入できます。

    基本的には、確定申告書に必要事項を記入し、必要な書類を添えて税務署に提出すれば、確定申告は完了となります。

    確定申告書のサンプルの一部

    国税庁公式HP(PDF)より、確定申告書のサンプルの一部。
    「給与」などの欄は源泉徴収票を参考に記入し、「配当控除」「住宅耐震改修特別控除等」など該当する控除額を記入します。

    控除額は自分で計算しても良いのですが、国税庁のWebサイト「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトなどを使えばより手軽になるでしょう。

    必要な書類は税務署でもらってくることもできます。
    また、「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトを使えば入力した数字を記入した形で、自宅のプリンターでの印刷または電子申告(e-Tax)が可能です。

    ★給与所得者向けの簡略化された「確定申告書A」は令和5年に廃止され、「確定申告書B」に統一されます。

    ②確定申告の期限は原則として「3月15日」

    1月1日~12月31日分の確定申告書は、原則として「翌年の2月16日〜3月15日」までの間に提出する必要があります。

    従来において、確定申告書は用紙に記入、または「確定申告書等作成コーナー」などで作ったものを郵送するか、直接税務署に持ち込んで提出するものでした。

    ただし現在は「e-Tax」(電子申告)が可能なため、今後も継続的に確定申告を行う予定なら、その準備を進めておくのも良いですね。

    ただし「e-Tax」の利用にはマイナンバーカードが必要となります。
    またマイナンバーカードを新規発行するには、最低でも1ヶ月程度かかりますのでご注意ください。

    ★郵送で確定申告書を提出する場合の送付先については、お住まいの自治体の管轄税務署の情報をご確認ください。

    CHECK国税局・税務署を調べる

    ③税務署で行われている相談窓口の活用も

    確定申告の時期になると、各税務署は確定申告についての相談窓口を設けてくれます。

    待ち時間こそ発生しやすいものの、これらの窓口は無料で利用できますので、確定申告が不安ならばこちらを使ってみるのも良いでしょう。
    もちろん「完成した申告書の内容が合っているか、確かめてもらう」だけでも構いません。

    相談の受付場所や時間帯については、管轄税務署の公式HPなどをご確認ください。

    個人でできる節税対策についてのまとめ

    個人でできる節税対策についてのまとめ

    個人で利用しやすい節税対策
    所得控除
    基礎控除所得が2400万円以下であれば誰にでも適用
    配偶者控除
    配偶者特別控除
    扶養控除
    収入の高くない配偶者や子、直系尊属を扶養している場合などに適用
    障害者控除
    寡婦控除
    ひとり親控除
    勤労学生控除
    家庭環境が条件に合致する場合に適用
    医療費控除保険金などを差し引いた医療費が10万円を超える場合に適用
    確定申告が必要
    寄附金控除原則として「寄附金-2,000円」に適用
    確定申告または「ワンストップ特例制度」の利用が必要
    生命保険料控除
    地震保険料控除
    該当する保険の一部に適用
    社会保険料控除各種健康保険や年金保険料などの全額に適用
    小規模企業共済等掛金控除共済契約に基づく掛金などに適用
    個人型確定拠出年金「iDeCo」を含む
    雑損控除災害や盗難で被害を受けた場合に適用
    税額控除
    住宅借入金等特別控除住宅の新築や購入、増改築をした場合に適用
    確定申告が必要
    配当控除株などによる配当を受け取った場合、その5%または10%相当に適用
    確定申告が必要
    その他
    積み立てNISA
    • 「国の基準に合った投資信託」のうち、年間40万円までの利益が非課税となる運用方法
    • 年間非課税投資枠が適用されるのは20年
    NISA
    • 年間120万円までの利益が非課税となる運用方法
    • 年間非課税投資枠が適用されるのは5年
    iDeCo
    • 投資額の全額が所得控除の対象となる
    • 原則として60歳まで引き出せない
    • 基本的には「個人で作る年金」

    あなたの年収や家族構成による部分は多いものの、サラリーマンであっても利用できる節税対策は多いです。

    ポピュラーな「ふるさと納税」をはじめとする節税方法を活用して、正しく税金を節約できると理想的ですね。

    

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    サイト監修

    天野 伴 (税理士)税理士/お金管理と仕組み化の専門家 | 天野 伴
    税理士事務所所長。企業向けの会計・税務業務のみならず「仕組み化」のコンサルティング業務も展開。家計管理のコツなど、時間と労力を掛けずに自然とお金が貯まる仕組みづくりを得意としている。著作『1行家計簿―――世界一かんたんにお金が貯まる本』他多数