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犯罪収益移転防止法とは

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犯罪収益移転防止法とは、犯罪により得たお金の出所を隠し、反社会勢力などが資金力を得ることを防ぐための法律です。

一見すると生活に縁遠いこの法律ですが、実は「口座を開設する」「ローンを組む」ときなど、わたしたちの日常にも密接にかかわっている存在でもあります。

今回はそんな犯罪収益移転防止法について、その内容や目的とわたしたちの生活への影響、そして「知らないうちに罪を背負わない」ための対策をまとめました。

そもそも犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)とは?

まずは、そもそも「犯罪収益移転防止法」(正式名称「犯罪による収益の移転防止に関する法律」)とはどういった法律なのかについて見ていきましょう。

①目的は犯罪に得たお金のマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐこと

犯罪収益移転防止法とは、一言で言うとマネーロンダリング(資金洗浄)、つまり犯罪により得たお金の出所を隠し、クリーンなお金に見せかけることを防ぐための法律です。

例えば振込詐欺により得た1000万円のお金は、「被害者→詐欺グループ」というお金の動きだけであれば簡単に追跡できます。

ですが「被害者→詐欺グループ」の間に多くのもっともらしいやりとりが存在したり、そもそも詐欺グループの口座の所在が不確かであった場合、犯罪により動いたお金の追跡は困難を極めますよね。

そんな中で犯罪に使われる銀行口座の作成を拒否したり、怪しい取引を未然に防止するために犯罪収益移転防止法が存在するということです。

②金融機関などは「疑わしい取引」を届け出る義務がある

犯罪収益移転防止法により、銀行やクレジット会社、宝石・貴金属等取扱事業者などは「疑わしい取引」を確認した場合、所管行政庁に届け出る義務があります。

実際、この「疑わしい取引」は警察庁の令和3年分のデータによると年間53万件以上が届けられており、この法律が機能を果たしていることが分かりますね。

「疑わしい取引」の基準は「業界における一般的な知識と経験」を前提にするということでかなり曖昧ですが、基準が曖昧だからこそ「証拠はないが、少し怪しいな」と思える取引であっても届け出が可能だということでしょう。

ちなみにこの「疑わしい取引」に関する情報を使い検挙された事件のうち、およそ半分は詐欺関連の犯罪となっています。

犯罪収益移転防止法とわたしたちの生活の関係とは

ここからは、犯罪収益移転防止法と私たちの生活との関係についてお話していきます。

①クレジット会社を含む金融機関と契約を結ぶとき、本人確認は必須(オンライン可)

現在クレジット会社や銀行などと新しい契約を結ぶ場合、何らかの方法での本人確認は必須となっています。

その詳細については後述しますが、「金融機関で本人確認書類を要求される」というのは私たちの生活において、もっとも身近に犯罪収益移転防止法を感じられる場面だと言えるでしょう。

②住所や勤務先から離れた店舗では、口座を開設できない場合がある

現在私たちが銀行口座を開設できるのは原則として「住所または勤務先」のお近くの支店に限られます。

インターネット銀行や何らかの事情がある場合などの例外はあるものの、こちらも犯罪収益移転防止法の制約によるものですね。

一人が多くの口座を作り、それを犯罪組織が買い取って流用する…といった問題を防ぐためと言えば、こちらも納得いただけるかと思います。

お客さまのお住まいの住所またはお勤め先のお近くの店舗(ゆうちょ銀行・郵便局)でお申し込みください。

お客さまのお住まいの住所やお勤め先から離れた店舗でお申し込みいただいた際は、ご事情等をお伺いし、口座開設をお断りする場合がございます 

ゆうちょ銀行公式HPより

③外国PEPs(外国の政府などの要人)についての確認もこの法律が根拠

現在、金融機関と何らかの契約を結ぶときには「あなたが外国の政府などの要人やその関係者(外国PEPs)でないこと」を確認されます。

この確認について疑問に思っている方は多いかと思いますが、こちらも犯罪収益移転防止法の制約によるものですね。

一般の方であれば「外国PEPsに該当しない」ことを確認すれば、特に問題なく手続きを進められます。

ただし申込者が外国政府高官等やその家族にあたる場合には、カード会社などが定める専用の届け出が必要となっており、契約に手間を要することになりますね。

▲三菱UFJ銀行公式HPより。
外国PEPsやその関係者は、インターネット上で口座開設の手続きを済ませることができません。

取引時確認(本人確認)を求められる特定取引について

現在クレジット会社を含む金融機関とカードやローン、その他分割払いなどの契約を結ぶ際、何らかの形での本人確認は必須となっています。

これは金融機関は犯罪収益移転防止法が定める「特定取引」を行う際には、犯罪行為でないことを事前に確認する必要があるためですね。

「特定取引」にあたる取引は、主に以下の通りです。

犯罪収益移転防止法第七条が定める特定取引
  • 普通預金口座の開設
  • 定期預金、定期積立の契約
  • クレジットカード等の交付又は付与
  • 信託契約
  • 保険契約や共済契約
  • 有価証券の貸借や媒介など
  • 金銭の貸付け
  • 暗号資産の交換など
  • 貸金庫の貸与
  • 二百万円を超える旅行小切手の販売や買取り 他

採用している本人確認の方法はカード会社・金融機関などによって異なりますが、いずれにせよ本人確認なしで「特定取引」を利用することはできません

これについては、身分を偽った犯罪者などがカードやローンを不正利用する可能性について考えると納得いただけることでしょう。

カードを作る際の主な本人確認方法
  • 本人確認書類(運転免許証など)の提出
  • 本人名義の銀行口座の登録
  • 本人限定受取郵便を使ったカードの受け取り(写真付きの本人確認書類が必要)

ちなみに本人確認とはいっても、「本人確認書類のアップロード」「銀行口座の登録」など、オンライン上で済ませられる手続きも多いです。

犯罪収益移転防止法違反となってしまう状況とその刑罰

ここからは、犯罪収益移転防止法違反となってしまう可能性のある場面についてお話していきます。

①通帳やキャッシュカードを他人に貸したり売ったりしてしまった場合

あなたが自分の通帳やキャッシュカードなどを他人に貸したり、売ったりしてしまった場合には、犯罪収益移転防止法の違反となり一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金が課される可能性があります。

こちらは刑罰ですので、確定すれば前科が残る形となっていまいます。

「闇金を利用してしまい、口座を売れば債務がなくなると聞いて通帳を売ってしまった」といった例はしばしば聞かれますが、口座情報やキャッシュカードは絶対に譲渡しないでください。

②失くした・盗まれた通帳やキャッシュカードを不正に利用された場合について

キャッシュカードや通帳を知らないうちに不正利用されていたという場合、あなたに「故意や過失がなければ」罪に問われることはありません。

不正利用が疑われる状況にあるのなら、できる限り早く銀行や警察に出向き、状況を相談するべきと言えるでしょう。

ただし「違法業者に暗証番号を教えた」などあなたに過失がある状況ならば、罰金刑などが課される可能性は否めません。

場合によっては刑事事件に強い弁護士などに相談する必要もあるでしょう。

③プレゼントや報酬をうたう、SNSを使ったマネーロンダリングに要注意

最近話題に上がっているのが、犯罪収益移転防止法の隙間を突くようなSNSを使ったマネーロンダリングです。

例えば「現金をプレゼントしてもらえるという抽選に応募したところ、10万円の入金を受けるはずが100万円の入金を受けた。
差額の90万円を返金してほしいと言われたためその通りの対応を行った」…という内容だと、一見なんの問題もないように見受けられます。

ですがこの100万円が詐欺により得られたお金であったとすると、知らないうちにマネーロンダリング(資金洗浄)に関与してしまう形となります。

実際に被害者が振り込め詐欺の「受け子」として逮捕されたという例もあるとのことで、得体の知れない懸賞への参加などは避けた方が良いと言えるでしょう。

犯罪収益移転防止法についてのまとめ

  • 犯罪収益移転防止法とは、犯罪により得たお金の出所を隠すことを防ぐための法律
    金融機関などには「疑わしい取引」を事前に届け出る義務がある
  • カードを作るときや口座を作るとき、ローンを組むときなどに本人確認を要求されるのもこの法律のため
  • 通帳やキャッシュカード、口座情報を譲渡すると刑罰に問われる可能性も。
    SNSを使った犯罪に巻き込まれる例もあり注意が必要

マネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐための法律と言うと一見縁遠いようですが、犯罪収益移転防止法は私たちの生活に密着した法律の一つです。

特にSNSを使った犯罪は身近なものですので、自分の身を守るためにも「得体の知れない相手に口座情報を提供しない」ことは徹底したいところです。



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サイト監修

天野 伴 (税理士)税理士/お金管理と仕組み化の専門家 | 天野 伴
税理士事務所所長。企業向けの会計・税務業務のみならず「仕組み化」のコンサルティング業務も展開。家計管理のコツなど、時間と労力を掛けずに自然とお金が貯まる仕組みづくりを得意としている。著作『1行家計簿―――世界一かんたんにお金が貯まる本』他多数